山の記録(13) 七種山ふたたび

2010年9月21日火曜日

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※ヤマレコにも記録しています
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-78862.html

3連休に1日だけ山に行けることになったので、何処にするか数日前から思案した。移動に時間を割くより、出来るだけ長く山中に滞在していたいので、近場で候補を幾つか挙げた結果、七種山系に行くことにした。

七種山系は先日、七種槍~七種山~七種薬師と縦走しようとして、途中で断念した記憶が未だに濃い。今回はその6月1日に実質途中敗退したルートの逆回りを辿ることにしたが、今回もまた色々と記憶に残る山行となった。




7時過ぎ、福崎町の野外活動センターに到着。先着する車は1台も無い。山に朝靄が残る中、身支度を整えて七種薬師の登山口を目指す。七種の滝方面に少し歩くと左手に林道があり、そこから分け入る。有志による看板もあり明瞭だ。

急な登りを過ぎて稜線へ。幾度か緩やかになっては急になり、を繰り返すと南北に縦走する路に出合った。薬師は右方向、少し歩くと山頂にたどり着いた。山頂には石室があり、お薬師さんが祭られていた。まずは1ピーク。

三山縦走路を十字峰へと東へ進む。歩きやすい林間の稜線を少し下って少し登ると十字峰の案内板を見つけた。地形図でみると、確かに稜線が十字に走っている。しかしピークはもう少し北のようで、歩いて行くと改めてピークの看板をみつけた。

北への稜線を歩く途中、左手に鋭い岩峰が連なる稜線を見る。これが噂の「地獄鎌尾根」。大したことない、いや北鎌ばりだ、などと諸説あるらしいが、遠目に眺める限りなかなか楽しそうな様子。ただわざわざ往復するのも大変だし本日の
目的と異なるので、改めてチャレンジすることにして先に進んだ。

この日、登り始めから幾度となく行く手を蜘蛛の巣に阻まれていたのだが、この薬師からの路の途中でなんと茨を含む藪が立ちはだかってきた。しっかりした踏み跡もついている路なのに、この草木の勢いはどうだ。蜘蛛の巣は数十分程度で出来上がるものもあるらしいが、藪はさすがにそこまで早くは無いだろうから、ここしばらく誰も足を踏み入れてなかったようだ。先日の藪漕ぎの悪夢が蘇りそうになりながら、何とか乗り越えた。しかし蜘蛛の巣は結局下山するまでついて廻り、長らく誰も縦走していないことが結果として分かった。

七種槍や七種山を右手に眺めながら、ひたすら稜線を北へと歩く。鬱蒼としたコルを過ぎると登りが続き、ようやく縦走路から七種山へと分かれる三叉路にたどり着いた。この時点で時刻は11時、薬師に着いた頃に「11時までに三叉路に着いたら七種山頂にも足を運ぼう」と思っていた(山頂までは倒木が多く距離の割に時間がかかる)予想通りだったので、2ピーク目を目指した。

先日と変わらない倒木を潜っては乗り越えして山頂へ。ここで本日初めて他人と出会った。中年男性が1人、どうやら七種の滝から登ってきたらしい。すぐに笠岩方面へ降りて行ったので話す間もなかったが、時刻などから推測して滝から上がってきて槍を目指す人はいなさそうな雰囲気。つなぎ岩だけ踏んで、早々に山頂を後にした。

三叉路に戻って再び縦走路。槍への道は、先日両足を攣ってしまった激登りの逆で激下りである。まず大きく下って、小さなピークを一つ過ぎ、再び大きく下る。ストックを持っていては却って歩きにくいくらいの傾斜もあり、確かにこれを逆に行くのは(しかも15kgの荷物を背負って)今の自分には困難だったはずだ、と実感しつつ、少し消耗しつつも七種槍に着いた。

ここから先は岩稜が何度となく出てくる、いつもの自分なら楽しいはずのルート。しかしこの日は違った。槍付近で水が尽きたのだ。この日は前回の轍を踏まないよう荷物を軽めに留めたのだが、その結果水はプラティパスにいれた2リットルしか持っていなかった。これを、長時間の行動+体力消費を防ぐための小まめな給水+昼頃からの気温上昇+日当たりのよい稜線歩きの結果、予想外に早く消費してしまったのだ。いつもなら半分近く余った状態で下山することが多いので、まったく油断していた。

それでも最初は糖分や塩分を補給する食べ物は十分あるし、後は下山するだけだから問題ないだろうと思っていたのだが、七種槍から駐車場までは案内板によると100分かかるとあった。前回は2時間程度で槍まで来たが、逆廻りなら下りなのにそんなにかかるだろうか……と歩き出したが、疲れた体で小さいながらも岩混じりのピークを幾つも越えていくのは思ったより時間がかかった。日差しは容赦なく照りつける。氷砂糖などを口に含んで渇きを癒すが、だんだん足に来ていることが分かった。少し進んでは休み、少し歩いては立ち止まり。だんだん休んでいる時間が長くなっていった。脱水症状、熱中症。そんな言葉が頭をよぎったが、自覚があるうちはまだ大丈夫だろう。途中何度か「まだ帰ってこないの?」と家人からメールの着信があり、はやく帰ってやろうと気ばかり急いた。

しかし、思ったより長い……確か送電鉄塔が見えたら下りるだけだ……そう思いながらやっと送電鉄塔を目にしたとき、そこまでの距離に一瞬途方に暮れたことは当分忘れられそうにない。そして、やっとの思いで辿りついた時に、下山路はまだ先(しかも少し登る)ということに気付いた瞬間のそれも。滑りやすい砂混じりの道だったはずと思ったらその通りで、下手にストックを使ってバランスを崩しても怖いので、ストックは腰に付けて木につかまりながら1歩1歩下りて行った。

登山開始から約8時間、ふらふらになりながら車に辿り着いた時の安堵感と言ったらなかった。自販機でスポーツ飲料を買い求め、むさぼるように飲み干した。確か脱水時に急に給水すると良くない(低酸素症だか赤血球がどうこう云々)と知ってはいたが、そこまでじゃないだろうと言い訳しつつ。何とか一息ついたものの、もうそのままそこらに寝転がりたいくらい疲れていた。その頃になると七種山オンリーのハイカーもちらほらいたり、野外センターに遊びに来ているファミリーもいたりして、流石に駐車場で転がっていたら不審がられると思い、ゆっくりながらも車を運転して帰宅した。



今回はとにかく給水計画の失敗が最大の課題として残った。携行する水分は多すぎても邪魔だし少なすぎると不測の事態に対処出来ない。日帰り登山でも、給水地点の有無の確認は必要だと思った。逆に、自分がどのくらいのペースでどのくらいの時間行動したら、どのくらいの水分を必要とするのか。体調や気候によっても変わってくるのだろうが、大体の目安にはなりそうだ。万一のビバークのことも考えると、やはり1日2リットルでは少ないということになる。

ただ、2リットルしかなかったとしても、残量を確認しながら給水量を調整すれば何とかなった可能性もある。一般的なハイドレーションシステムは完全にザックの中に隠れてしまってみることが出来ないため、例えば外から見えるように外部にボトルをつけて、そこからホースを伸ばすとか、そもそもホースを使わずボトルから直接給水するとか、そういう手もあるだろう。外から見えないことを嫌ってハイドレーションを用いない人もいると聞くし、ここは考慮の余地がありそうだ。

しかし、いずれにしても8時間程度の行動でバテてしまっていては、目標とする山々を歩き通すことはまだまだ自分には出来そうにない。もっと鍛錬に努めねばならない。

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