雪を歩く手段

2011年1月19日水曜日

t f B! P L
スキー、スノーボード、スノーシュー、ワカンなど。
雪山で移動する手段≒道具にも色々ある。これらについて、自分なりの経験を踏まえて思うところを書いてみた。





■スキー
自分はスキー場での滑走経験しかないが、山をやる人の中には、いわゆる山スキーをやる人が結構いるようだ。山スキーはBC(Back Country)スキーとも呼ばれ、スキー場の整備されたゲレンデの外側や、そもそもスキー場ではない場所を滑るスキーの楽しみ方の一つ。誰も滑っていないような場所、トレースのない場所を滑る楽しさ、喜びは、経験のない自分でも分からなくもない。

山スキーは出来れば経験し習得したいとさえ思っているが、山スキーの道具はスキー場ではレンタルしていなさそうだし(必要がないからかもしれない)、買うと非常に高価だ。普通のスキー場用の靴・板・ビンディングならば、安売りで3点セットで3万円程度で買えたりもするが、山スキーの道具は安売りされているところはあまり見ない上に、そもそも高い。需要が少ない=生産量が少ないことや、スキー靴(ハードブーツ)のままで歩けるようブーツやビンディングが特殊だったり、ザックにつけて担いで登ったりするために軽く作られているために、割高になるのだと思う。しかも整備されたスキー場ではない場所を滑るのだから、危険度も高い。総合的に初心者にはちょっと手が出ないジャンルだ。

ただ、単に山で滑るためだけでなく、雪山に登る際の移動手段として考えると、登りはシールをつければ他の道具以上のスピード&効率で登ることが出来て(何しろ長いため雪に埋もれずに済む)、下りは当然速いので、大変優秀だからだ(本来はそちらが本分だろうか)。僕にスノーシューを譲ってくれた方も、もうスキーでしか登らないから……という理由もあって譲ってくれたとのことで、やはりいずれは手を出したいところだ。

■スノーボード
元々スキーの経験があって、それなりに滑れるようになっていたので、後から「スノボやってみない?」と誘われた際も、まぁ滑れるだろうと思っていた。ところが実際にソフトブーツを履いてスノボのバインディング(なぜビンディングとは呼ばないのだろう)で足を固定してみると、何とも不安定で滑る前から転んでしまった。まともに立てるようになり、滑れるようになり、停まれるようになり、ターン出来るようになるまで何回転んだことだろう。おかげで腰を痛めてしまい、もう二度とスノボはやるものか、とその時は思ったものだ。

今思えば多くの人が楽しんでいるのだから、基礎をしっかり押さえて、コンディションの良いゲレンデで滑れば、自分も楽しめるのかもしれない。特にBCはスノボのイメージが(当時は)強く、一緒に行った上手な人たちは皆ヘルメットを被って林の中の新雪ばかり滑っていたように思う。スノボで山を登ることは出来ないが(今は左右で二つに分かれてスキーのようになる、スプリットボードというものがあるらしい)、これもまた有効な移動手段なのだろう。いや、どちらかというとスキーよりは遊びに振った道具だろうか。

■スノーシュー
現在使用中のMSR ライトニングアッセント25(現行型ではない、前側のベルトが2本のモデル)を手に入れるまでに色々と調べたが、こと登山用途に限定すると、MSR製品(特にライトニングシリーズ)を超えるものは無いのではないか、というのが現時点での印象だ。最大の理由は、フレーム自体が爪状になっているということ。おかげで登り下りでのトラクションは勿論のこと、トラバース気味に歩く際でも滑りにくくて有効だし、いわゆる前爪部分がグリップしないような状態(デコボコしている等)でも、フレームの何処かが引っ掛かりさえすれば歩くことが出来る。これは同じMSRのエボにしても、ライトニングには劣る部分だと思う。エボにはエボの良さ、例えば前面の投影面積が小さいため蹴り込むように歩く際の抵抗が小さい等があるが(某登山用品店で店員から聞いた話)、総合的にみるとライトニングの勝ちだと思う。

他社製品で同様にフレーム自体が爪になっているものは今のところ見受けられない。せいぜい、デッキの裏面に幾つか歯がついている程度だ。何故真似しないのだろうと思うが、どうやらMSRはスノーシューに関して幾つか特許を持っているようで、おそらくそれで押さえているので他社は真似出来ないのだと思う。おかげでMSRはいつまでも殿様商売をしていられるわけだ。出来るだけ安くて良いものを買いたいのが消費者の立場だが、致し方ない。TSL、アトラス、G&Vなど色々なメーカーから(特にG&Vは安くて注目していた)出ているが、ほぼフラットな雪面を歩くようなシーンでしか使えないと思っている。

MSRか否かに関わらず、一点こだわっていたヒールリフターについては、実際にライトニングアッセントで山を歩いてみた結果、今のところあまり必要ではないように感じた。急勾配を延々直登するようなシーンなら効果的なのかもしれないが、なかなかそういう状況に出くわさないために、使わないか、使ってもすぐに戻さなければいけないためやはり使わなくなるか、どちらかだ。緩斜面だと逆に、戻しておかないと前のめり気味になってしまい、却って疲れてしまうだけだった。これは実際に体験してみて分かったことだ。

■ワカン
これはまだ経験がないが、歩く場所や雪の状態によってはスノーシューやスキーより優れていることもあるようだし、軽量で安価というメリットもある。いずれ試してみたいと思うが、その機会は来るのだろうか……

■その他
スキーの派生になるが、ショートスキー状のスキーベンチャー(フリーベンチャー・フリートレック)というものがある。ビンディングが山スキーのものに似ていて、踵をフリーにも固定にも出来るため、登り&滑りの両方で使えるとのこと。実際にこれで山スキーをやっている方もいるようで、使えないこともないのだろうし、何より比較的軽量かつ安価なところが注目に値する。しかし、これを1本目の山スキー板とするのはどうだろうかと思っていて、基本的な技術を身に着けるのはやはりノーマルな板だろうし、ノーマルな板を手に入れてしまったら、これを追加購入することはあるのだろうか……とも思うので、何とも言えないところだ。

また、同様な製品として最近「スノーランブラー」というものが出てきた。見た目はミニスキーで、ビンディングは踵が常にフリー(テレマークスキー状、とでも呼ぶべきか)。そしてソール面には三角形のブロックが沢山埋め込まれていて、登りはそれで(説明によるとシール以上に)グリップし、下りは緩やかに滑れるという代物だ。価格はスキーベンチャーよりも更に安価なようで、何よりシールが不要なところが運用コストを抑えられつつ無精者には向いていそうだ。しかし実際に使った方によると、とてもじゃないがターンは出来ないとのことで、開発者のblogには「曲がれないことも無い」とあったが、現実的には直滑降用というか、雪の上を(登り下り関係なく)歩くための板と考えるのが良さそうだ。それならば、スノーシューで十分じゃないか……ということで、これまた微妙なところだ。



他にも雪の上を移動する道具があれば検討してみたいが、今のところはスノーシューで間に合っていて、次に手を出すとすれば山スキーかと思うので、あれこれ思い悩んだり調べたりという時間の無駄遣いは、もしかしたらこの程度にしておくかもしれない。

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