山の記録(15) 氷ノ山(その2・山行編)

昨日アップした、山の記録(15) 氷ノ山(その1・装備編)※以下URL の続き。登山経験1年で初めての雪山に挑んだ。





■山行概要
午前5時半頃、同行を申し出てくださったSさんにピックアップしていただき一路氷ノ山へ。付近の気温は1~2度、氷ノ山以外の山には雪は皆無なものの、朝の光に照らされた氷ノ山は一面うっすらと雪化粧していた。1000m以上は雲の中で様子は分からず。しかし気温から察するに、ある程度は雪がありそうな雰囲気。

福定親水公園の駐車場に車を停め、身支度。先に2台停まっていたが、いずれもまだ出発前の様子。Sさんと荷物について相談し、少しでも軽くするため水500mlを1本とアイゼンは置いていくことにした。(水は500mlを2本と300mlを1本、テルモスに500ml、水筒にポカリ600mlを持ってきていた)水が不足すれば雪から作ればいいということで、Sさんは元々500mlしか持っていなかった。

万が一に備えるということでSさんは8mmのロープ30mとシャベルも装備し、7時半過ぎに出発。まだ土の露出のほうが多い登山道を登っていく。10分も登って布滝を過ぎた頃にはもう暑くなってきて、僕は羽織っていたゴアのアウターと帽子を脱いだ。Sさんもミドル兼アウターを脱いで長袖のインナー1枚である。天気は曇りで気温は0度くらい、雪交じりの山道だが寒さは全く感じなくなった。

更に歩を進めて地蔵小屋を過ぎたあたりから雪が増えてきて、平坦なためか夏道が分かりにくくなっている箇所があった。そこを過ぎて再び急坂に入ったところで背負っていたスノーシューを身に付けた。何もつけずに歩くツボ足に比べて雪に沈み込む量が少ないため足への負荷が小さい上に、ツボ足では登りにくい場所でもグイグイいけるということだが、何しろ雪山は初めてなので、ツボ足と比べてどの程度ラクなのか分からない。ともかく前を行くSさんのペースが上がったので、きっとラクなのだろう。

しばらく登っていく頃、アクシデントが発生。なんとSさんのスノーシュー(MSR デナリ・クラシック)のストラップが切れてしまったのだ。切れた箇所は力が加わる部分ではないことと、ストラップの素材自体が硬くなっていたため、どうも経年劣化のようだった。その証拠として、氷ノ山越を過ぎたあたりで左右計8本のストラップが全て切れてしまったのだ。靴紐で応急処置をしつつ使っていたものの、寿命には勝てなかったらしい。靴のソール剥がれはよく聞くが、ストラップ切れはあまり想像しなかったので勉強になった。アイゼンなどでも樹脂ベルトを使用している製品は注意したほうが良いかもしれない。

ストラップが切れて片足はツボ足、片足はスノーシューとなったSさん(最終的にはツボ足オンリー)だが、一向にペースが落ちることはなく、途中で追いついてきて先行してもらった別の登山者に追いついては抜いて消えてしまった。僕自身もいつもと同じかそれ以上のペースで登ってはいたが、何しろスノーシューを履いているとはいえ雪に多少なりとも沈み込むため、地面を直接歩くよりも足を動かす量が大きく、その分疲労も増える。かつ久しぶりの登山(腰痛以降、近所の城山を歩いた程度)だったこともあるのか、氷ノ山越の手前でまず右足太股上面、次に左足太股上面に痛み(というか攣りそうな気配というか)を感じ、癒えるまで休んだりペースを落としたりせざるを得なかった。

氷ノ山越を過ぎるとブナ林、樹氷が期待されたがSさん曰くまだまだとのこと。雪の状態は少し変わって固めというか締まった感じになっていて、より歩きやすくなった。小ピークを越えるあたりで再びペースが落ちたが復活、甑岩を夏道通りに巻いて山頂手前。木道は完全に雪に隠れていて、笹も半ば覆われつつあった。太股の疲労もピークに近づきつつある頃、ようやく山頂に到着した。出発してから約4時間、5月の3時間弱に比べて1時間も余計にかかったことになる。これは雪の影響なのか、それとも体力的な影響なのか……

山頂はほとんど風もなく、曇っていたため視界は良くないが落ち着いていた。冬山の山頂ともなると風が吹き荒れていてさぞ苦労するだろうと思っていたが、気温も登山口とあまり変わらず若干拍子抜けしたのが正直なところだ。Sさん曰く、厳冬期(2月頃)には笹は全て隠れ、立ち木も半ば埋もれて所謂モンスター化して景色は全く変わるとのこと。今でも5月と全く違った景色だが、そんなに変わるとは。そう思いながらSさんに記念写真を撮っていただき、山頂の避難小屋に入った。

小屋には先行していた他の登山者の他に、おそらく別ルートで登ってきた登山者数組が滞在していた。ようやく腰を落ち着かせて昼食の準備に取り掛かる。湯が沸く間にふと自分の背中をみると、もうもうと湯気が立ち上っていた。ライトシェルジャケットを脱ぐとジャケットと身体の両方から湯気。インナーも脱ぐと、身体(背中)は乾いていて湯気は出ていなかったが、インナーから湯気が出ていた。どちらもすぐには乾きそうにないし、着たまま乾くのを待つには冷えそうなため、予備のインナーを着用して、仕舞ってあったゴアアウターを着用することにした。おそらく今日の天気ならばそれで十分だろうと思われたが、果たして帰着するまで寒さを感じることはなかった。

12時半頃、小屋を後にして東尾根から下山することとした。雪はあるが踏み跡もあるため夏道ははっきり分かった。スノーシューは再びザックにつけてツボ足で歩き出したが、全く問題なかった。今度はSさんに遅れることなく、5月と同じかそれ以上のペースで歩くことが出来た。特筆すべきことはあまりないが、1点、標高が下がって雪が減り岩や木の根が露出している場所はとても滑りやすく、慎重に下りる必要があった。登りではあまり考えなかったが、下りは注意すべきと思われた。

14時過ぎ、福定親水公園の駐車場に帰着。登りでは苦労したがそれ以外は天候にも恵まれて、充実した山行となった。


※以下、気がついたことを随時記載していく


■スノーシューについて
今回使用したMSR ライトニング・アッセントは、急斜面を登る際に踵を浮かせずに済む「ヒールリフター」が備わっているが、実際に使用する際は出し入れに若干手間がかかる(手で引き上げ/下ろしが必要)ことと、ずっと急なら良いが緩斜面混じりだと踵が上がりすぎて前のめりになり却って歩きにくくなることがあり、ほとんどのシーンでヒールリフターは使用しないままだった。ヒールリフター無しモデルと比べると価格的にも若干高価になるため、結構な急斜面を長時間歩くような状況が想定されなければ、無しモデルでも良いのではないかと思われた。

また、MSRのライトニングシリーズはフレーム自体に歯がついている独特な形状だが、普通の登山道を歩くようなケースだとその特徴~トラバースに強い~はあまり生かされることがないように思われた。どちらかというと同じMSRでもデナリシリーズや、TSLなどのモデルのほうがこういった状況には強いのではないだろうか。比較してみないと何とも言えないが……

■ウェアリングについて
実体験として、0度くらいまでで風や雨/雪が無いのであれば、正直何でも良いのではないかと思われた。動いている限り寒さは感じないし、少しの休憩でも同様である。汗をかいても着替えてしまえば問題ないと思われるが、万一に備えて用意している着替えを消費してしまうことは問題かもしれないし、そもそも冬山では汗をかかないペースで歩くことが大切とも聞くので、状況次第であろうか。

また、吸汗速乾素材のインナーと、同様の機能を持つミドル兼アウターを着用していて、結果的に肌は乾いていてインナーとミドルの背中は汗が乾いていないという状況に至った原因は何か。ザックの背面はデコボコのウレタンパッドがメッシュ生地で覆われた仕組みで、汗/湿気は結構逃げるはずだが、発散に追いつかないほど発汗したのか、何なのか……このあたり、ザックなしで歩く/別ウェアで歩く/スローペースで歩く、などを比較してみないと結論は出せそうにない。

腰から下は何も問題なかった。靴下は薄手のウール/化繊混が1枚だけだったが、さすがゴアテックス・デュラサーモ入りの冬靴、寒さを感じるどころかポカポカするほどであった。衣類は何でも良いかもしれない状況でも、靴にはお金をかけてもいいかもしれない。

多くの登山者に共通の永遠の課題であるところの手袋は、雪に手をつかない限り薄手のフリース手袋だけで十分だった。手に雪がついたままだと体温で解けて濡れてしまうが、すぐに払い落とせば問題なし。衣類同様、手袋も0度くらいまでなら何でも良さそうだ。

■靴ずれについて
長時間の行動になると、決まって左の踵で靴ずれが発生するのだが、今回初めて「ボルダースポーツ」を使用してみたところ、少し赤くなった程度で靴ずれは発生しなかった。登っている途中で靴ずれを起こしそうな気配はあったのだが、それ止まりだったところを見ると、効果はあったようだ。
http://www.boulder.co.jp/sports/sports_index.html

■水について
七種山での失敗(過去blog参照)以降、水には慎重になっていたのだが、今回は寒い時期なので消費も少ないだろうと全体の運搬量も抑え、水筒もハイドレーション(プラティパス ビッグジップ 2L)をやめてボトル式の水筒にした。結果、登りで水筒内を500ml消費、下りで200ml程度の消費、後は昼食時のラーメンで500ml、コーヒーで150ml程度(これはお湯をいただいた)で済んだ。間違いなく積雪があると推測出来るなら、もっと少ない運搬で済むはずだが、今の自分には判断がつかないので一人で歩くとしたら……という想定で合計2L強を運ぶこととなった。次回雪山に挑む際には(コースにもよるが)1.5L程度に抑えて、テルモスも空でも良いかもしれない。

■体力について
「日頃運動をしない登山初心者」程度の体力しか無いため、行動時間には制約が大きいと思われる。特に冬場は日が短いため、コース選定にはより慎重になったほうが良いのだろう。今回は吹雪くこともなかったので短時間で下山出来たが、仮に吹雪いてホワイトアウトしていたらルートの見極めに時間がかかり(もしくは迷い)、そうこうするうちに暗くなってビバーク……という事態も想定される。山での行動は午後3時まで、という格言?は根拠あるものなのだろう。

■腰について
腰痛が落ち着いて約3週間、その間筋トレをしたり、近場を歩いたりして今日に望んだが、日帰りにしては重めの荷物にもかかわらず腰に疲労を感じることもなく帰着出来た。念のため腰にはベルトを巻いていたが、吸汗や速乾の機能は持ち合わせていないため、もしかすると過剰な発汗はこのベルトも一因かもしれない。腰の保護と発汗の抑制、どちらを取るか……

3 件のコメント :

  1. 雪山デビューおめでとうございます~。
    氷ノ山が日帰り圏内なんてうらやまし~。
    ウエアの件ですが・・・
    私の個人的なスタイルとしては、基本的に山行中は一切着替えません。
    「汗をかかないように行動する」のは、実際にはムリです。過剰な発汗をしない運動レベルに抑えることはもちろん当然ですが・・・
    でも、汗をかいてもいいように「即乾素材」にこだわってるわけで、山行中に着替えなくていいことを前提にしたウエアリングなんですね。
    汗冷えを防ぐためのフラッドラッシュスキンだし、汗冷えを感じないメリノウールだし。
    細かく調整できるようレイヤリングをしているので、面倒でも歩き始めて身体が少し温まってきたらこまめに衣服調節をします。
    よほどの低温とか強風とか、降雨(雪)中でないかぎりジャケットは着ないし、ミドルウエアも汗をかくまえに脱いでしまいます。
    ��マサカえろメッシュ一枚にはなりませんけどw)
    アウターシェルは登りで発汗量が多くなると、どんな素材であっても水分の排出が追いつかなくなるので、外から濡れない・寒くない天候なら着なくていいと思ってます。
    オーバーパンツは常時はいてますけどね。サウナ状態で下半身痩せが期待できるので(うそ)。
    ゼッタイに乾かないレベルの濡れ方、泳ぎ主体の沢登りの場合などで、焚き火でも乾かせない時に限り予備の服に着替えますけど、その場合は朝起きて行動開始前にもう一度濡れた服に着替えて、乾いたものは温存します。
    「不潔」って話はもう完全無視ですねー。

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  2. お疲れ様でした!
    スノーシューの件、ご迷惑をお掛けしました。まさか切れるとは...。
    ツボ足とスノーシューですが、やはりスノーシューの方が楽だと思います。ツボ足はトレースがあったものの、沈んだ溝(15~20cm)に足を入れて、また次の溝へ...の動作の連続。常に引き上げる動作が必要なので行動時間が長いと疲労感にかなり差が出ると思います。下りや急斜面の登りはまた別ですが(^^;;
    ウェアリングについて、やはり登りは暑かったのですね。ミドルウェアのジッパーをしっかり上まで締められておられたので、もしかしてと思っていました。冬は上着が多いので特に換気を良くして体温の調整が必要ではないかと思います。暑ければ水分も欲しくなっちゃいますし、不快感も出てくるでしょう。一方で停止した時は意識的に上着を着て冷えを防ぐ必要があると思います。
    体力について、冬場は雪の状態により大きく行動が制限される場合がありますし、天候の急変もありえます。体力はあるに越したことないですよね。ヘロヘロになるまで行動すべきでないと思います。元気に下山できるくらいの余力がある方が良いかと。
    今回は夏道がしっかりわかる程度の積雪でしたが、今週の積雪でその道が判断できなくなる可能性があります。過去何度も遭難があった山です。これからの季節は更にしっかりとした装備で慎重な行動が要求されると思います。

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  3. ■にゃみさん
    コメントありがとうございます。やっぱりエロメッシュ必要ですかねw
    もっと小まめに脱ぎ着するようにしないとダメですね。反省です。
    ■seiさん
    初心者を導いていただき、ありがとうございました。
    そういう意味でお疲れなんじゃないかと思います^^;
    今回、色々と初めて経験することが多いことは事前に分かっていたので、あえてやってみたりもありましたが、やはり習うより慣れろというか、百聞は一見にしかずというか。大変勉強になりました。歩行やウェアリングだけじゃなく……
    当分氷ノ山には近づけそうにないので、より低い山で経験積んでおきたいと思います。

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